俺は朦朧としてて全然覚えて無いんだけど次の日嫁が様子見に帰ってきた時に俺は寝てたんだけど腕が腫れ上がってビックリしたらしい
両腕とも2倍以上に膨れ上がってて近くで嗅ぐとすごい異臭がしたからこれはヤバイだろって近くの病院に行くことになった
近くの皮膚科と内科が一緒になってる病院で医者に診てもらったら医者が「こんな酷いのは初めて見ました」「こちらから大学病院の方には連絡しておくので今すぐ向かって下さい」って事で車で10分くらいのところにある大学病院に向かうことになった
すぐ車椅子が来て救急科に連れていかれた
(なんで救急車で来たわけでもないし、夜間でもないのに救急なんだろ?)って思いながら運ばれるとどうやろ町医者から症状を聞いて医者が6人くらい待機してた
そこから代わる代わる俺の腕を見て6人で色々「これは○○の可能性もあるから〜〜〜〜」みたいな話してたんだけど、その中の1人が看護師に「ちょっとやっぱり○○先生呼んでっ!」っなった
その先生が来る前に血液検査だけでもしましょうってなったんだけど、俺の腕は2倍近く腫れ上がっててポパイみたいになってるから血管が取れないから下から取りますって言われた
って思ったら
「パンツ脱がせますねって言われて足の付け根の部分に見たこともないくらいの太い針とデカイ注射器で3本血を取られた
流れ終わった頃には高熱と血を抜かれて意識が遠のいていく感覚
隣に嫁も居てくれて嫁は他の医者からここに来るまでの経緯を聞かれてたんだけど
みんなアワアワしてたから俺ってそんなにやばいのか?と不安になった
やっと呼んでた先生(後から聞いたがこの先生が救急センター長とかで一番偉い)が来て他の医者から状態聞いて一通り触ったり腕動かせますか?とかある程度診察した後に何人かの医者と処置室を出た後「奥さんもちょっと来てもらえますか?」と呼んだ
若い医者が俺の状態を説明しててみんな興味津々に俺の腕を見てた
もうその時には前腕が自分の意思では動かせなくなってて皮膚がパンパンに腫れ上がって
少しでも腕を曲げようもんなら、皮膚がはち切れそうで痛みで痺れて腕の感覚はなかった
「腕に膿がかなり溜まってます。おそらく海で切った時に悪い菌が入った事が原因じゃないかな?その菌次第では命に関わる場合もあるのでいま血液検査の結果を待ってる所です。高熱もそのせいだと思います。とりあえず今から切開して膿を出す手術をします。」
との事だった。俺はこの腕の痛みから解放されるならなんでもいいから早くお願いします!って言ったんだが先生の隣にいた嫁は涙目だった
切断だけは…と嫁は話したが「まずは切開して膿を出して菌を体から出さないといけないので今は旦那さんにはお話しないでおきましょう」って話があったらしい。
「そのまま処置室でやります。あっ奥さんもカーテンの向こう側に居てもらって良いですよ」
ってかなりラフな感じで不安になった
人生初の手術だったので腕とかならこんなもんなんか?と思ってた
両腕のベッドの脇にオムツみたいなの引いて、「ここでやりますんで、そのままで結構ですよ」と言われて心電図を付けられた
中にはメモしてる若い研修医?みたいなのも混じって先生が俺の病状とこれから始める手術の説明をしてた
先生「じゃあまず左腕から始めますよー」
俺 「え?麻酔なしですか?」
先生「小さい穴を開けるだけなので局所麻酔です」
前腕は全般的に腫れ上がってたが、肘の内側の特にブヨブヨしていて膿が溜まっている箇所に局所麻酔を打たれた
針は刺さったけど中々麻酔が入らないらしく
「固いな…」と言いつつ無理矢理押し込んでた
その後麻酔が効いてるか確認して
「まず○○パンチ(競馬とかロトとかのマークシートの横に置いてある使い捨て鉛筆的なやつ)で穴開けるよー」って俺にも周りの医者たちにもどっちに話してるかわからん解説をしながらパツンパツンになってる皮膚に刺して、ぐるりとそのまま刺した
医者が腕の穴の周りを指で押すと凄い量の膿がドバッと吹き出して医者の服にかかった
なんとも言えない臭いが部屋中に充満してきた
鼻に付く夏場に生ゴミを1週間くらい放置した感じのニオイ
その場にいた全員周りの医者も看護師も全員が顔をしかめてる
何人かは臭すぎて顔背けてたのに誰も臭いとは言わないのがすごく恥ずかしかった
(ううっ…くせぇ…臭いなら臭いって言ってくれぇ…恥ずかしくて死にそう…)
「ゴホンゴホン…膿の勢いが凄いからもう一箇所穴を開けようか…」
穴からは脈に合わせてビュッ!ビュッ!と膿が吹き出してた
最初は血の方が多かったけど徐々に膿の方が濃くなって匂いもキツくなってた
看護師が腕の下に敷いてたシートを何回も取り替えてくれるけどすぐに膿だらけになってた
医者「うーん、もう一箇所はこの辺かな(プシュ」
最初よりかなりキツイ臭いがすぐにした
オリモノの付いたナプキンを牛乳に付けてた後ゲロ拭きましたみたいな臭い
その瞬間さすがに俺は臭すぎて
「臭すぎるっ…!タオルか何かください!」
って言ったら看護師さんがガーゼを口に当ててくれた
ワロタ
大変そう
医者はとりあえずその膿を検査に回すように言って綿棒ですくったやつを容器に入れて渡した
周りの医者も何人かは耐えきれず外に出た
膿が出てるところは生理食塩水の入れた注射器で洗ってくれているが中々止まらない
医者「じゃ逆の手もやりましょうか」
そのおかげで膿は吹き出しはしなかったが両腕から臭いが吹き出すからクサイの4倍掛けだ
ガーゼの上からでも臭うからマスクなんて意味ないと思う
でもそんなことすらどうでも良いくらい眠くなってきた
検査で血は流れたし、腕からも流れ出てるので頭がさらに朦朧としてきた
医者「一旦このまま膿を流しましょう。じゃあこのまま生理食塩水かけ続けておいて」
輸血と点滴をされて腕に水をかけられたまま少し待つ事になった
「1さん?頭ボーッとするだろうけど聞いてね。菌が検査の結果あまりよくないみたい。腕もここまで酷いと筋肉と神経もダメになってるだろうから大きく切開して全部洗い流します。次は全身麻酔でやりますんで痛く無いですよ。奥さんにはお話ししてありますから。」
って言って準備が始まった
下半身にすごい冷たい感覚があってその瞬間変な夢?みたいなのを見た
なんか電車に乗って乗り継ぎを無理やりすごいさせられる夢で不思議だった
足?舌?代筆?
指だよ
自分の腕を見たら穴があった所が避けてて赤い身と黄色い脂肪?みたいなのがあってそこを医者がピンセットでイジって生理食塩水ぶっかけてた
逆側の腕も同時進行で他の医者がやってた
痛みは全く無くてカーテンの向こうに嫁が見えた
そこからまた寝た
俺の腕が暴走するようになったのは……
両腕の膝のあたりは包帯が巻かれてて血が滲んでた
まだ熱が続いてて意識は朦朧としたままだった
看護師「目覚めました?ここはICUですよ。先生と奥さん呼んできますね」
俺「お願いします。あと水もらえませんか?」
腕が使えなかったのでストローが刺してあるコップで飲むように言われたがストローを固定できないから吸えない
看護師さんに持ってもらって水を飲んでると医者と嫁が来た
医者「今回は最初は穴を開けて洗浄をしてみましたが、膿が凄くて切開することになりました。腕の筋繊維にあまり良くない菌が付いてたので切開して壊死してる部分は切って洗浄しました。左腕は神経も少しダメになってますんで…」
俺「え?左腕は切断するんですか?」
医者「まだわかりません。今日から1日に2回血液検査して少しでも菌が増えてたり壊死が広がるようなら切断する事になるかも知れません。」
俺「え?縫合してないんですか?」
医者「ええ。菌がまだ完全には落ちてないので閉じれません。あとは容態が落ち着くまではICUに居てもらうことになります。とりあえず今は菌の影響で熱が続いてる状態なので、ゆっくり休んでください。あとは奥さんと…」
俺「ごめんな。迷惑かけて…子供は大丈夫?」
嫁「うん、実家のお母さんが見てくれてる。切断になるかも知れないから覚悟してくださいって言われてビックリした。」
俺「すまん、当分迷惑かける事になるかもな。俺の病気ってヤバいの?」
嫁「医者からは壊死性筋膜炎って言われた」
俺「初耳だな。」
嫁「私もだよ。とりあえず心配しないで。ゆっくり今は休んで。」
俺「悪い。そうさせてもらうわ。」
嫁「私も一旦帰って用意するからまた明日来るね。」
嫁には迷惑かけて申し訳ないがすごく疲れてたので、またすぐ寝てしまった
無性にトイレに行きたくなったが歩けないし、ナースコールを襲うにも手に力が入らないし腕が動かない
周り見渡したら点滴が3つ入ってた
(これだけ点滴されるほどヤバかったのか…)
3つともそろそろ無くなりそうだったので点滴変えに来る看護師さんを待った
少ししたら看護師さんが代えの点滴を持ってきた
看護師「俺さん起きてたんですねー。」
俺「すいません!トイレ行きたいです!ナースコール押せなくて…」
看護師「あっ!こちらにしてください」
尿瓶を出された
俺「あの…これにしなきゃダメですか?」
看護師「いえ、トイレまで行けるなら大丈夫なんですけど俺さん手使えませんよね?」
俺「あっ…はい…」
看護師「じゃあこちらで(ニコッ」
俺はその日始めて女性におしっこをする竿に右手を添えてもらった
俺「あっ…来てたんだ」
嫁「起きた?色々着替えとか持ってきたよ。痛いのどう?」
俺「腕は大分マシだけど体がダルい」
嫁「まだ熱あるみたいだしね。もう少ししたら洗浄するってさっき先生が言ってたよ」
嫁と家の事とか子供の話をしてたら昨日の医者と助手の医者と看護師が来た
医者「俺さんじゃあ洗浄始めますねー。洗浄って言っても傷口は開いたままですし痛みもかなりありますんで、昨日と同じ麻酔を少なくしてやりますよ。」
俺「痛いんですか?」
医者「まぁ、傷口を直接また開いて触りますんで麻酔なしでは痛いですね。」
看護師がまたシートを敷いて準備する
医者は傷口の状態を見ますといって包帯を外している
(そういえば自分の腕がアレからどうなってるかまだ見てないな)
膿が出ていて乾いた膿が包帯にくっついて傷口の切ってある中の肉にくっ付いてた
剥がす時に想像以上の痛みで声が出ない
医者「あー!痛かったですね!次からは先に麻酔しましょう!」
傷口をよく見ると腕の肉が無いっ!?
皮だけの部分があるぞ…
医者「壊死してる部分は切除したのでびっくりしますよね」
看護師「はい」
あっ…きたきた昨日の冷たい感覚だぁーと思った瞬間からまた電車の永遠と乗り継ぎさせられる夢をみた
電車降りたいのにずっと乗せられて降りれない
(うっ…なんか痛いな…)
ぼやけた視界で時計が見えた
(えっ?15分しか経ってないぞ?いてて)
傷口を見ると両腕を2人の医者が生理食塩水を入れた注射器で膿を洗い流しながら指で直接ゴシゴシ洗ってた
今まで感じた事ない部分に何かが入ってきて動いてる
動かす度に痛みがすごい
痛みは感じるけど声は出せないし体も動かない
痛みに耐える為に足に力が入ってるのがわかる
生理食塩水入りの注射器を傷口に直接刺して注入すると小さい方の傷口から血と膿が混ざった液体がビュッ!ビュッ!と出てくる
医者「よし。今日はとりあえずこれで。」
(やっと終わったか…)
力が抜けてまた寝た
なかったな
立てるまで尿瓶
立てるようになってからは嫁にちんこ支えてもらってた
尿カテのが楽なのに可哀想
時間は1時間くらい経ってた
(いてぇ…腕の傷口がズキズキする)
医者「……とりあえずこれを続けて様子を見ます。旦那さんが目を覚ましたらお話ししてあげて下さい。起きてからも少しボーっとしてると思いますけど」
嫁「わかりました。」
俺「なんだって?」
嫁「大丈夫?」
俺「うん…途中感覚があった」
嫁「昨日も見たけどグロいわ。見てるだけで痛そうで見れなかったわ。今のところ菌は増えてないみたい。とりあえずこれで様子見る事になるけど切断の可能性はまだまだありますって…今日も結構肉削ってたよ。」
俺「そっか…」
この日から同じ時間の洗浄が抜糸するまで2ヶ月以上続くことになる
見てるよ
腕の切開をしてから前腕の腫れは無くなったけど両手の手の甲からと右腕の手首から常に点滴が腫れすぎると足首から入れられている状態で浮腫みで傷口とは違うところまで痛かった
地獄の洗浄も毎日続いた
洗浄の後は高熱と激しい筋肉痛でピクリとも体を動かせなかった
ICUの中には子供を連れてこれなかったので、やっと会えることが嬉しかった
医者「大分熱も下がって血液検査も良好です。明日から一般病棟に移ってもいいでしょう。」
俺「本当ですか?」
医者「洗浄と血液検査と点滴は変わらず行います。」
俺「縫合はまだまだですよね?」
医者「そうですね…まだ菌がいつ増えてもおかしくないですし、傷口に付いてる菌は完全には落ちてません。あと、壊死してる部分は大分切除したのでまずはそこの回復になります。」
確かに右腕は動く気配はあったけど左腕は常に肘を曲げた状態で全く動かせなかった
洗浄の時も麻酔をかけてもらわないと腕を伸ばせない程だった
俺「左腕は元通りにはならないって事ですか?」
医者「リハビリするとしても何年もかかると思います。正直に話しますと左腕に関してはまだまだわかりませんし、状態によっては切断も…」
俺「そうですか…」
まぁ今すぐ命の危険がどうのこうのはなくなったと思おうと前向きに考えた
だけど抱っこが出来ない自分を見てやっと俺は腕が動かないんだってことを現実に感じた
子供に自分で触れることすら出来ず
撫でてやる事も出来なかった
痛みなのか痺れなのか浮腫みなのかわからんが触れられても感覚がなかった
身の回りの事は嫁や看護師さんが手伝ってくれるが子供の抱っこは出来ない
それが親として失格のような気がして1番堪えた
命の危機を脱したら色々なことが現実として感じた
そんな俺を見て嫁は生まれたばかりの子供に俺の左手の小指を握らせてくれて
この子をまた抱けるようにどんなに時間がかかってもリハビリを頑張ろうと思った
それは痛み止めの点滴が24時間じゃなくなった事
今まで24時間痛み止めの点滴が打たれてたんだけどそれが無くなった
傷口はまだ開きっぱなしなので少し動かすと声にならない声が出るくらいの痛みがあった
常にズキズキ痛む
夜中に無意識に動かして飛び起きるなんてしょっちゅうで夜はあまり眠れなかった
それと洗浄の時に自然治癒で傷口が塞がるから塞がりそうになってくると傷口をまたメスで切る
洗浄の時は麻酔が効いてるから痛みは無いけど
麻酔が切れるとまた新しい痛みが増えた
周囲の人間のセリフがおおよそ患者に向けたものじゃない感じで違和感ハンパない
でも最初の頃は手を動かせないので唇で操作してた
音声入力も使ってたけど同部屋の人に迷惑がかかるのであまり使わなかった
でも少しずつ右腕も使えるようになった結果小指から肩まで動かさずにフリック入力が出来るまでになった
それを見てそろそろ縫合してもいいのではないかって話になり洗浄の際に肉芽を作るクリームの様な薬を腕の傷口から注入して切除した肉を再生するって治療が追加された
左腕は酷くて傷口の近くは触るとそのまま骨を触れたくらいだった
脳みそ食う方じゃないだけマシと思う他ないな
脳みそ食うのはアメーバだったわ
筋肉食うやつが2種類だ
>>1nがどっちか知らんが
もうその頃には洗浄は相変わらず痛かったが麻酔にも慣れて今日こそは寝ないようにしてやるからな!なんて思いながらどちらかというと麻酔を楽しんでた
入院してから1ヶ月半が過ぎてやっと縫合する事になった
縫合が終われば湯船に浸かれることだけが楽しみだった
縫合してからも洗浄があるんだが、縫合してからも針のない注射器で生理食塩水と肉芽作る薬の注入が局所麻酔のみになり痛みが凄かった
幼稚園児のドリルみたいなので鉛筆で点をなぞって図形を書く
なんてのを1年繰り返して右腕は時々痺れたりする以外は動こくし元通りになった
左腕は動かせるようになったが力があまり入らなくて時々指が勝手に動いたり震えたりする
最後駆け足になったが以上だ
ちなみにここまではその左手で書いてた